2014年8月4日月曜日

Explorer #142『Anonymous Jacket その2』

さて、前回のAnonymous Jacketの続きです。

ジャケット持参でお客様のお宅にご訪問させていただきました。
ウチはプレスルームなんて素敵な場所がないので
こういうときはお客様にご迷惑をお掛けしてしまいます…

お宅周辺の高級かつオシャレな雰囲気に気後れしながらも
「僕も育ちは良いんだ!」(笑)と自分に言い聞かせご訪問。
今回オーダーいただいたお客様は日本のとある工芸品の蒐集家で
展覧会のキュレーションなども行っていて
世界的にもご高名なお方(便宜上S様とお呼びします)でした。

もうね、この時点で若干お腹が痛くなってきましたが
お会いしたらとても気さくで優しい方でひとまず安心です。

「刺し子」に興味があってネットを見ていたらAnonymous Jacketに辿り着き、
「他の刺し子の商品と違って藤原さんのはファッションとして成立していたから興味をもった」と、
なんとも嬉しいお言葉をいただきました。

さて、いざ打ち合わせ。
僕がすごいなあと思ったのが、
普段はそこまでファッションにはこだわらないとおっしゃっていながらも、
聞いてくるポイントが的確というか、
洋服にお詳しい訳でなないので用語はご存じないのですが 
「ああ、そこ聞きます?」と言うほど鋭いんですね。
さまざまな芸術を見てこられた「審美眼」なのでしょう。
ヒヤヒヤしながら僕。

Anonymous Jacketはすでにパターンは出来ていて、
あとは若干の修正が可能ないわゆる
「パターンオーダー」にちかいことまでは可能なのですが、
S様のご要望をまとめると「こりゃあ、ビスポークしかねえな」って(汗)

僕もねAnonymous Jacketには並々ならぬ思い入れがあるし
このジャケットには長い時間をかけて着る人の人生を彩って欲しいと思っているので
つくるならお客様にとって最良の形にしたいと思っています。

Anonymous Jacketは価格だけならとても高額です。
それでもそれに関わる人や時間や労力を考えたらむしろリーズナブルだと思います。
1sinはとても小さなブランドで今のところステータスにはなりません。
そこに価値を見いだしてくれたのがとても嬉しかったです。
このジャケットは世界中どこを探してもウチにしかつくれません。

S様はご自身が素敵だと思う技術や素材などをつかって
手間ひまをかけてつくられる「ものづくりが」好きで、
それには相応の対価を支払うのは当たり前の事であると。
同時にその背景をきちんと教えて下さいとも。

これっとみんな分かってることだけどなかなか言えない事です。
買う側も売る側(つくる側)も今だからこそもう一回きちんと考えたい事です。
もちろんすべての人ができる訳ではないですけど
こういう人を本当のオシャレって言うんでしょう。

さてビスポーク…
ちょうどこの直前から1sinのパターンは、
実は皆さんが大好きな日本を代表するコレクションブランドで
この春まで腕を振るってきたパタンナーさんが担当してくれていて、
その彼はテーラーでも修行をされていたのでこれは一緒に連れていくしかない。と。
(彼の話はまた別の機会にでも話しますが1sinにはもったいない技術と実積です)


と言う訳でこの続きはまた次回!