2013年2月25日月曜日

Explorer #97


先週末に渋谷で東日本大震災の復興支援イベントがありまして
そこでホントにちょっとだけお話させていただく機会がありました。
人前でしかも震災復興とかなると
「もう、どうしていいか!」って感じだったんですが
せっかくの機会でしたのでちょっとだけボソボソと。
で、僕の話がつまらなかったため途中で時間オーバーってなっちゃたんです(汗
個人的な確定申告でバタバタしてるなかで殴り書きで下書きを書いたので
せっかくなのでこちらに全文を残しておこうと思います。
文体がめちゃくちゃなのは、むしろ僕の切羽詰まった感を感じていただければと!
イベントはすごくあたたかで素敵なイベントでした。

こんにちは。
1sinの藤原新と申します。
このような場所でお話をする程の者ではないのですが
本日は機会をいただきましたので少しばかりお話をさせていただきます。
よろしくお願いします。
まずは簡単な自己紹介からさせて下さい。
1sinは2011年2月に「ファッションビジネスを通じて社会的課題の解決に向けて取り組む」を活動理念に立ち上げたメンズファッションブランドです。
なんだかややこしい感じですが、ハイブリッド車などを買う時にエコを意識するように、ファッションを楽しむことが、「かっこいい」や「かわいい」が「誰かのためにもなる」世の中にそんな仕組みをひろげたいと思って活動しています。
ま、基本的に私一人でやっているので小さな規模です。
今は立ち上げ1ヶ月後に発生した東日本大震災の復興支援活動に力をいれています。

実際になにをやっているかと言うと、1sinの商品のシャツなどに被災地の仮設住宅にお住まいの女性にハンドステッチで刺繍などを入れてもらうことを仕事として依頼しています。また地元の企業と協力して新製品などの開発ができないかを取り組んでいます。
現在は岩手県大槌町、宮城県南三陸町、福島県相馬市を中心に活動しています。
本日あちらにいらしている大槌復興刺し子プロジェクトさんとは刺し子をつかったものづくりを一緒にしています。

1sinの特徴としては商品はイベントなどでは販売せず、セレクトショップなど中心にお取引をしているという点だと思います。
なぜかと言うと、復興にはとても長い時間がかかります。今は復興商品として売れることがあるかもしれませんが。長期的な活動のためには、販路を確保して流通に落として、「復興」の文字がなくても手にしていただける商品である事が大事だと思っているからです。ですので、洋服屋さんで他の商品と並んでも手にしていただける商品づくりを目指しています。

こんなことを言ってますが、実は私はもともとアパレルの専門家ではありません。
今でも平日は会社員として全然違う仕事をしています。
そんな私がなぜ1sinを立ち上げたかと言うと、私は今年で35歳になるのですが、十数年社会で働いていて、それなりの経験をして、なんとなくですが「世の中はまわっているなあ」と感じる様になりました。
「良いことをすれば良いことが、悪いことをすれば悪いことがまわってくると」
あ、私は無神論者です。
それでなにか社会的な活動ができないかなあと思い、でも仕事もあるので自分の時間を削ってでもできることは何かと考えたら、ファッションは昔から大好きでファッションンなら24時間365日考えていても平気なんで、ファッションをツールにしたソーシャルビジネスということで1sinを立ち上げました。ですのでボランティアも社会貢献も素人です。

ここにいらっしゃる皆さんはアパレル業界の方も多いとお聞きしていますが、実際に被災地でものづくりをして、それを販売するとなるとそれはそれは大変なんですよね。
1sinは今年の春夏シーズンで被災地での商品づくりは3シーズン目になるのですが、とにかくコストがかかります。
ハンドステッチ刺繍にしたって、もともと素人のお母さん達にお願いするのでロスも多いし、技術だってバラバラです。それにいくらビジネスと言っても普通の工場に頼む金額では被災したお母さん達に仕事として依頼することは私にはできません。
結果、スタート時はコストが通常に1.5倍から2倍くらいかかりました。
初回は大赤字でした。
ただ継続することが大事だと思いましたし、継続することでコストを下げることもできると思いましたし、なによりビジネスとしての可能性も感じていました。

カネなし、コネなし、スキルなしの状況で何をしたかというと。
CAMPFIREというクラウドファンディングを利用しました。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、クラウドファンディングと言うのは簡単に言うとネット上にプロジェクトを立ち上げて、そのプロジェクトに共感してくれた個人の方々から資金を調達をするという仕組みです。
アメリカのキックスターターが有名ですが、スタートアップ時の資金調達などの新しい仕組みとして注目されはじめている仕組みになります。
寄付にも似ていますが、支援をしていただいた方にはリターンをお返しするので、先行発売に近いかもしれません。
twitterやfacebookなどのソーシャルツールを最大限に利用するところも新しいですね。

1sinでは2012年の春と冬に2回プロジェクトを立ち上げて、約120万円を集めることに成功しました。
この資金を商品製作費の一部に当てていて、3シーズン目にしてようやく利益が出るかなといったところに持ってくることができました。

クラウドファンディングのいいところとしては
「資金集めと同時に、テストマーケティング、商品PR、自己プレゼン力の向上、顧客の確保」ができると思っています。

社会貢献系の事業は目的が他にあるので一概に「こう」あるべきだとは思いませんが、プロダクトやサービスの質がイマイチと感じることがあります。
つくることや活動自体に重きを置いているののかもしれませんが、
継続的な活動をするためにはマーケットで評価されるのも必要なことだと考えています。
NPOなどが利用することの多い、寄付や助成金を使うとどうもマーケティングを疎かにしやすい様に感じます。
クラウドファンディングの場合は最初に目標金額を設定して、その金額まで達しないと一切資金をもらえません。
また消費者の方から直接資金を集めるので、リターンに魅力がなければどんなに素晴らしい目的があっても資金はあつまりません。
つまり、クラウドファンディング内で成功できないプロジェクトはそれより大きいマーケットでも成功するのは難しいです。
逆に言えばここで多くの支持を集めることができればマーケットでも支持してもらえる可能性があるということです。
寄付や助成金を利用すると、ものづくりの段階は可視化されにくく、製品が出来上がってから、「はい、できました、はい、売ります、はい、売れませんでした」となる可能性が高い様に感じます。
もともと実績や商品力があれば良いのですがそうでない場合は結果を出すのが難しいことがあると感じています。

1sinでは1回目に65人、2回目は89人の支援者があつまり、また同時にメディアから注目もしていただき、大手新聞社やラジオなどからも取材がきました。

モノをつくってからはじめるのではなく、つくるところから同時にPRやマーケティング、顧客確保ができることは立ち上げ初期の企業やプロジェクトにはとても有意義なことです。

お陰様で、東京で6店舗、全国でセレクトショップなどをふくめると約20店舗で1sinの商品をお取り扱いいただける様になりました。
有名なコレクションブランドと並んで被災地でつくられた商品が並んでいます。
これは我ながらとても面白いと思っています。

私がこれまでやってきて感じていることです。

東京の感覚と被災地の感覚はやっぱり全然違うんです。
これが本当に難しいです。
継続するにはある程度収益性を高めなくてはいけません。
でもそれは復興支援の一面でしかありません。
復興支援にこちらのビジネスを持ち込むのはどうなのか?
正直私は未だに自問自答をしています。
私が関わったことは本当に良かったのだろうかと。

またこれまで営業でいろいろまわってきて
中には「藤原さん、復興はいま売れないですよ」と言われたこともあります。
ビジネスである限りこれも正しい一面であるのだと思っています。
現に私自身も、メディアで復興と見ると
「ああ、お腹いっぱいっす」と思うこともあります。
このバランスを取るのがとても難しいと感じます。
ただ継続した活動にするには、ビジネス感覚というのは絶対的に必要なことだと思います。

被災地の様子は2年たってもそんなに変わりません、と言うのが私の印象ですが。
復興ということで考えると第二段階に入ってきているとは思います。
なにもない段階ではなく、今後何年もかけて続けていく仕組みをつくる段階に入りつつあると思います。
ですので今から現地で団体を立ち上げるのも良いですが、今あるモノをいかに伸ばしていくかだと思っています。

そして最後に、ここにいらっしゃるアパレルのプロの皆さんにぜひ考えていただきたいのが、
復興前にもどすのではなく、復興のその先につながる仕組みをつくるということです。
日本の製造業はかつてない不況です。もし、仮に復興前に戻すことができたとしても、ジリ貧なんです。
グローバル社会ではとても難しいことですが、これを考えることが1番の仕事だと私は考えます。
またそれを考えることができれば被災地に限らず日本の製造業が抱えている問題の解決につながるのではないかと思います。
どうぞよろしくお願いします。

長々とすいませんでした。
ありがとうございました。



こんな感じで!
あ、ただ一点だけ追記で。
1sinはファッションブランドなんです。
ファッションと復興や社会貢献を天秤にかけることはナンセンだけど
やっぱり「かっこよく」なきゃダメなんす。
逆になっちゃあダメなんです。

もうしばらく人前には出たくないっす(笑